経営者の再起のために ~経営者保証ガイドラインのすすめ~
目次
1. 企業の破産と経営者の個人保証リスク
2. 経営者保証ガイドラインとは?
3. 【平常時・融資時】経営者保証を解除・見直すための「3つの条件」
4. 【有事・債務整理時】ガイドラインを活用して経営者個人を再生する方法
5. まとめ:成功のカギは「早期相談」
要約
- 個人破産の回避:会社が窮地に陥っても「経営者保証ガイドライン」を活用すれば、経営者個人の破産を避けられる可能性があります。
- 手元に残せる資産:自由財産(99万円)に加え、年齢等に応じた生活費(約100万〜360万円)や「華美でない自宅」などを手元に残せます。
- 信用情報への影響:ガイドラインに基づいて債務免除を受けた場合、いわゆる「ブラックリスト(信用情報機関)」に登録されません。
- 成功のカギ:金融機関との交渉や手続には弁護士等の外部専門家の支援が不可欠です。対応が早いほど選択肢が広がります。
1. 企業の破産と経営者の個人保証リスク
中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人の連帯保証(経営者保証)を求められるケースが非常に多くみられます。
企業の資金繰りが悪化して破産を余儀なくされた際、「経営者個人まで破産して長年住んだ自宅を失ってしまったら、これからの生活や老後はどうなるのか」と深い悩みを抱えて当事務所(弁護士法人ニューステージ)へご相談に来られる経営者様は後を絶ちません。
もちろん、法人だけでなく経営者個人についても自己破産などの法的手続をとり、ゼロからやり直す方法もあります。しかし、「経営者保証に関するガイドライン(経営者保証ガイドライン)」を利用することで、個人の自宅や資産を一定程度保護しながら、経営者の再起・事業再生を図るという選択肢が存在します。
2. 経営者保証ガイドラインとは?
経営者保証ガイドラインとは、個人保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生・再起を支援するために定められた自主的ルールです。
経営者保証ガイドラインの主な柱
- 保証の不要化:法人と個人の資産・経理が明確に分離されている場合など、経営者保証を求めない取引を目指す。
- 資産の残存(手元に残せる財産):多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際、一定の生活費や「華美でない自宅」に住み続けられることを検討する。
- 残債務の免除:保証債務の履行時に返済しきれなかった債務残額は、原則として免除する。
※経営者保証ガイドライン自体に法律上の直接的な法的拘束力はありませんが、銀行等の金融機関は本ガイドラインの趣旨を踏まえ、真摯に対応・活用することが求められています。そのため、企業の連帯保証人となっている経営者の皆様には、積極的な活用検討をおすすめしています。
3. 【平常時・融資時】経営者保証を解除・見直すための「3つの条件」
経営者保証がなくなれば、経営者はリスクを恐れず思い切った事業展開ができ、万一経営が窮地に陥った場合でも早い段階で再生を決断できます。
経営者保証ガイドラインを適用し、保証なしでの融資獲得や既存保証の解除を目指すには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
経営者保証の解消に必要な3要件
- ① 法人と個人の一体性の解消(会社と個人の資産・経理が明確に分かれていること)
- ② 財務基盤の強化(内部留保の確保など、経営状況が安定していること)
- ③ 財務状況の適時適切な情報開示(金融機関に対して正確で信頼性の高い財務情報を開示・説明すること)
これらの条件を整えるためには、弁護士などの外部専門家が企業と経営者の資産・経理の分離状況を検証し、金融機関へ適切に開示・説明していくプロセスが重要となります。
4. 【有事・債務整理時】ガイドラインを活用して経営者個人を再生する方法
すでに企業の経営が行き詰まり、事業再生や債務整理を行う場合にも、経営者保証ガイドラインは極めて強力な選択肢となります。
(1) 債務整理・破産回避の仕組みとメリット
従来の破産手続では、会社が破産すると経営者個人も破産し、自宅を含むほぼ全ての資産を失うのが一般的でした。
しかし、経営者保証ガイドラインに沿って保証債務を整理する場合、手元に残せる財産(残存財産)を除いた資産を処分・換価して債権者に弁済を行えば、残りすべての保証債務について免除を受けることが可能です。
- 個人破産を回避できる
- 自己破産よりも多くの財産を手元に残せる可能性がある
- 信用情報機関(ブラックリスト)に登録されない
(2) 対象となる経営者の条件
ガイドラインに基づく保証債務整理の対象となるには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- ①法人の法的整理または準則型私的整理と同時・係属・終結していること
中小企業再生支援協議会(現:中小企業活性化協議会)による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停などの申立てを行っていること。
- ②経済的合理性が認められること
金融機関にとって、破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあること。
- ③免責不許可事由がないこと
破産法に定める免責不許可事由(財産隠しや著しい不利益行為など)がないこと。
【手続の基本フロー】
弁護士(支援専門家)へ相談 全金融機関へ一時停止(返済猶予)の要請
支援専門家の協力のもと弁済計画を策定・提出
(3) 手元に残すことができる資産(残存財産)の内訳
一定の経済的合理性が認められた場合、経営者の手元に以下の資産を残せる可能性があります。
| 残せる資産の種類 | 詳細・具体的な内容 |
| ① 一定期間の生活費(現預金) | 破産手続で認められる自由財産(99万円)に加え、年齢等に応じて約100万円〜360万円を上乗せして残せます。 |
| ② 華美でない自宅 | 破産手続と異なり、住み慣れた自宅を残せる大きなメリットがあります。(※ただし自己破産より多く弁済する「清算価値保証の原則」があるため、高額売却が可能な物件は売却せざるを得ない場合があります) |
| ③ 事業継続に必要な資産 | 会社が事業を継続する場合、保証人が法人へ資産を譲渡して法人の資産とすることで、返済原資から除外できる可能性があります。 |
| ④ その他の生活資産 | 生命保険の解約返戻金、敷金、保証金、電話加入権、自家用車なども残せる可能性があります。 |
5. まとめ:成功のカギは「早期相談」
経営者保証ガイドラインを円滑に活用するためには、金融機関交渉や計画策定において支援専門家である弁護士の助言と協力が不可欠です。
そして、本制度を活用するうえで最も重要なポイントは、「早期に対応を開始し、早期に完了させること」です。
対応が遅れると、法人の資金繰りが極限まで悪化し、保証債務の膨張や選択肢の減少を招くため、ガイドラインの活用自体が困難になってしまいます。まだ事業再生を具体化できていない段階であっても、早期に相談することで選べる手続や残せる資産の幅が広がります。
会社の今後のため、そして何より経営者様ご自身の将来のために、少しでも不安を感じた段階で、実績ある弁護士へお早めにご相談いただくことを強くおすすめいたします。
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